爺ちゃんの楽しみ

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自宅の外壁塗装が始まった、予定としては完成までに約3週間掛かるらしい。
私、「爺ちゃん、大丈夫?」
母親、「お爺ちゃん(義父)のことは業者さんに一様、話してある」
私の祖父は1日中テレビを見ている、自分の部屋から出るのはトイレへ行く時だけ、食事は孫の私が部屋に持って行く。
私、「爺ちゃん、学校へ行って来るよ」
祖父、「・・・」
テレビを見ているくらいだから耳は遠くはないと思うのだが、祖父が返事をしてくれないのはいつものこと。
玄関ドアを開けると、自宅の駐車場には塗装業者さんがビニールシートを広げ寛いでいた。
私、「おはようございます」
塗装業者さん、「おはようございます」
挨拶をしてくれた塗装業者さんは、1人を除いて皆、金髪、私の苦手なタイプ。
学校から帰って来ると、金髪頭の塗装業者さんは黙々と働いている、それを部屋の中から祖父が見ていた。
私、「ただいま」
祖父、「・・・」
「おかえり」が無いのもいつものこと。
母親がパートから帰って来た。
私、「おかえり」
母親、「ちゃんと勉強をしていた?」
母親が「ただいま」と言ってくれないのも、いつものこと。
母親、「勉強をしないとお父さん(祖父の息子)みたいになるわよ」
母親が父親のことをバカにするのは、いつものこと。
私、「爺ちゃんが部屋から出て、塗装をしているのを見てたよ」
母親、「お爺ちゃんがトイレ以外で部屋から出るなんて珍しいわね、大丈夫かしら」

翌日も学校から帰宅すると、祖父は部屋から出て塗装業者さんを見ていた。
私、「ただいま」
祖父、「・・・」
私に気付くと、祖父は自分の部屋に戻ってしまった。

その翌日、学校から帰ると、祖父は金髪頭の業者さんと何か話していた。
その翌日も、祖父は金髪頭の業者さんと話していた、しかも、笑顔で。
私、「爺ちゃん、何を話していたの?」
祖父、「・・・」

翌日、学校から帰ると、やはり祖父は金髪頭の業者さんと笑顔で何か話していたのだが、私に気付くと祖父は自分の部屋に閉じ込もってしまう。
外壁塗装に掛かる日数は残り2週間、私が帰ると祖父は塗装業者さんと話さなくると思い、帰宅時間を遅らせた。
夕方5時に帰ると
金髪頭の塗装業者さん、「お爺さん、面白い人だね」
家族とは口を利かない祖父が「面白い?」、外壁塗装が完成するまで私は帰宅時間を遅らせた。
外壁塗装が終わると、祖父は話し相手がいない。
代わりに私が話し相手になってあげようと思い、髪を茶色にすると祖父に叱られた、10数年ぶりに祖父に叱られたため嬉しかった。

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