甘酸っぱい思い出

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「ピンポーン」と玄関チャイムが鳴ると、
母親、「はーい」
「はーい」の一言だけで、チャイムを鳴らしたのが他人、しかも、男であることが分かる。
男の人と話す時の母親は、声が高くなる。
母親、「家の塗り替えをしてくれる業者さんが来たわよ」
家族と話す時の母親は、声が低くなる。
父親、「家には入って来ないだろ」
母親、「入って来なくても、家の中でゴロゴロしてたら見っともないでしょ!」
父親と話す時の母親は、口調がキツくなる。

女子高生の私、「家の塗り替えって、いつまでヤルの?」
母親、「約1ヶ月よ」
私、「えー、そんなに掛かるの!?」
母親、「長いと都合が悪いの?」
私、「私、来週からテストよ」
母親、「だから何?」
私、「業者さんが居たら、気になって勉強出来ないじゃない」
母親、「業者さんが居なくても、貴方、勉強しないじゃない」
父親、「してるよね、結果が出ないだけで(笑)」

学校へ行くのに家を出ると、家の駐車場で業者さんが寛いでいた。
私、「おはよう御座います」
業者さん、「おはよう。高校生?」
私、「はい」
駐車場に停めてある自転車に、高校のステッカーが貼ってることに気付いた若い業者さんが、「あっ、ごめんね」。

家に迎えに来てくれた友達、「ヘルメットは被らないの?」
私、「後で被る」
友達、「???」

部活が終わると
友達、「帰りにカフェに行かない?」
私、「今日はヤメとく」
急いで家に帰ると、家の塗り替えをしてくれる業者さんはいなかった。

家族で夕ご飯を食べていると
父親、「どうして今日はヘルメットを被らなかった?」
私、「被ったわよ」
父親、「家を出てから被っただろ」
私、「被ったから良いじゃない」
父親、「家を出る時からヘルメットを被りなさい」
母親、「被りたくないわよね、若い業者さんがいるところでは」

翌朝
母親、「いってらっしゃい」
私、「行ってきます」
父親、「ヘルメットを被るんだぞ」
家を出ると、駐車場から出やすいところに自転車があった。
誰が、自転車を動かしてくれたのだろう?
若い業者さん、「いってらっしゃい」
私、「行ってきます」
家の中を見ると、両親が私のことをニタニタ笑いながら見ていた。

私を迎えに来てくれた友達は、ヘルメットを被ってなかった。
私、「どうして、ヘルメットを被ってないの?」
友達、「貴方だって被ってないじゃない」
家の塗り替えが1ヶ月後に終わると、私と友達の初恋も終わった。

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